物事や人物が、元の場所や本来の状態に戻ることを「かえる」と言います。これには漢字表記として「返る」「帰る」「還る」があり、「反る」も同じく「かえる」と読まれますが、その他の読み方として「そる」とも言われます。ただし、「反る」は常用漢字に含まれておらず、通常は「返る」と表記されます。これらの言葉はすべて同じ語源を持ち、例えば卵がひなや子になる、孵化することを指す「孵る」も同じ語源です。
「返る」は、単に「元に戻る」という意味です。「貸したものが返る」や「落とし物が返る」といった、物が元の持ち主に戻る場合や、「我に返る」や「童心に返る」といった、変化した状態から元の状態に戻る場合に「返る」が使われます。また、「手のひらを反す(返す)」や「軍配が返る」といった、向きや位置が反対になる場合でも「返る」が使用されます。
一方で、「帰る」は、人が家や故郷など元々いた場所に戻る場合に使用されます。「家へ帰る(帰宅)」「故郷へ帰る(帰郷)」「会社へ帰る(帰社)」などが該当します。
「還る」は、限定的な文脈で使用され、通常、多くの地点を経由したり、様々な過程を経て、根源的な場所に戻る場合に使われます。ただし、「還る」は常用漢字ではないため、平仮名で表記するか、「帰る」という言葉を代わりに使うことがあります。
「返る」と「帰る」は、人が戻る場合に使う場合、使い分けが曖昧であり、どちらを使用しても良い場合もありますが、正確に使い分ける必要がある場合もあるため、注意が必要です。「初心に返る」と「初心に帰る」や「原点に返る」と「原点に帰る」のように、一度変化した状態が元の状態に戻る場合、どちらの言葉が正しいかは議論の余地があります。例えば、「返る」という表記を使用する辞書もあれば、「帰る」という表記を使用する辞書も存在し、どちらが正しいかははっきりしないことがあります。そのため、平仮名で表記することも一般的です。
「生き返る」は「返る」であり、「生きて帰る」は「帰る」です。生き返るは、一度死んだり、死にかけたりしたものが生き返ることを指し、「返る」が使用されます。一方、「生きて帰る」は、戦場などから生きて帰る場合を指し、人が元いた場所に戻る意味で「帰る」が使われます。
「とんぼ返り」は、元の場所に戻る印象が強い言葉で、「とんぼ帰り」と誤って書かれることもありますが、実際にはトンボが飛んでいる途中で身をひるがえして後ろに戻る様子を表現した言葉であり、向きが反対になる意味の「かえる」に基づいています。したがって、「とんぼ返り」ではなく「とんぼ返り」が正しい表記です。